シルバーの復活(中)/昔と今

ビデオ屋に泊まってる身として、出かける前は店長先生に一言挨拶をしておきましょう。

…プロキシ先生と話しましょう…

それからしばらく経った後――

リン
アンビー、出かけるの？

アンビー
うん。
何か買って来てほしいもの、ない？
例えばジュース、ハンバーガー、ミルク、あとハンバーガーとか。
ホロウを出た後、お店に寄れるかもしれないから。

アキラ
またホロウに入るのかい？
いつも急だな。

アンビー
約束があるの。
心配しないで、「キャロット」は準備してある。
今回はプロキシ先生の手を煩わせないわ。

リン
ミルクもハンバーガーもいらないよ。
アンビーが無事に帰ってきてくれたら、それで十分！

アンビー

分かったわ。
じゃあ…

①行ってくる

②やっぱり少し待って

＞≪在りし日の鋒鋩≫

知ってる情報を「トリガー」と交換しましょう。

…「トリガー」と話しましょう…

「トリガー」

アンビー…
大丈夫ですか？

アンビー

……

「トリガー」
今は話したくありませんよね。
いいんです、分かります。

アンビー
彼女――
「11号」の容態は？

「トリガー」
…聞けば、さらに落胆してしまうと思いますよ。
意識はまだ戻っていません。
六分街あなたに言われた通り、ビデオ屋の「Random Play」に預けました。
あの親切な兄妹が彼女の面倒を見てくれています。
これほど時間が経ったというのに、あの店は相変わらず…
…失礼しました。
こういった話をしている場合ではありませんね。
彼女の様子が気になるでしょうし、行きましょうか。

「トリガー」と一緒に、ビデオ屋にやってきた――

アキラ
おかえりアンビー。
今回はどうやら、とんでもないことに巻き込まれてるみたいだな。

リン
何か知りたいこと、ある？

アンビー
「11号」…
彼女の容態はどう？

アキラ
それが…
安定している、としか言えないんだ。
体温、心拍数、脈拍、どれをとってみても安定している。
安定しすぎているくらいだ。
正直、彼女がいま置かれている状態を考えると、不自然だと思えるほどに…
それに、意識はまだ戻っていない。

リン
どんな感じか、見るだけ見る？

「11号」の様子が少し心配。

起こしてみましょう。

…「11号」を起こしましょう…

「11号」に近づき…

ある名前をそっと呼んでみた。

「11号」

……

………………

アンビー

…これじゃダメみたい。

落胆して手を放した。
立ち去ろうとしたその時…

「記憶喪失」
重傷を負った「11号」は、記憶に問題が生じた。

「11号」

…………………………
ここは…どこ？

私は…？

アンビー
…目が覚めたのね、ハ…

「トリガー」
良かった。
…心配しましたよ、「11号」…

「11号」
「11号」、それが…私の名前？
変な名前。
「161051号」と間違えやすいし…
そんな呼び方をするのは愚か者だけね。

「トリガー」
元気なのは何よりですが、自分のことをそのように言わないでください。

アンビー
記憶が混乱してる…
見た目よりも、ケガの具合がひどいみたい。
――シルバー小隊のクローンが重傷を受けたとき、真っ先に支障をきたすのは記憶だったから。

昔の私も…
何も思い出せない時期があったわ。

「トリガー」
そうなのですか？
では、戦い方はどうです？

アンビー
もし、彼女が戦えなくなったら…
防衛軍は彼女を見捨てる？

リン
少なくとも、私たちは見捨てたりなんてしないよ。

アンビー
プロキシ先生…

アキラ
その通りだ。
ビデオ屋に居候が1人増えたところで、毎月の電気代と比べたら、些細な出費だからね。

リン
それに、うちのクロも私と遊ぶのに飽きてきちゃったみたいなんだよね。
誰かが一緒に遊んでくれたらな〜

アキラ
ビデオ屋の人手が足りていないことは、「カロン」…
いや、「トリガー」も知っているだろう？

アンビー
「カロン」…？

「トリガー」
相変わらず冗談がお好きなようですね。
店長さんが人気の秘密が分かった気が致します。
冗談はさておき…
防衛軍を代表して申し上げることはできませんが、少なくともオボルス小隊は、決して彼女を見捨てることはありません。

アキラ
ああ、「11号」がどれだけタフかは僕たちも知っている。
彼女ならきっと大丈夫さ。

リン
アンビーは「11号」のこと詳しいみたいだね？
どうすれば早く治るのか、教えてくれる？
私たちもできるだけ手伝うから！

アンビー
プロキシ先生の迷惑にならない？

アキラ
迷惑なんて、これまでニコが持ち込んできたものに比べたら些細なものさ。
それに、「11号」は僕たちの友達でもある。

アンビー
そう…
でも、実は特別なことは何もないの。
暖かく心地よく、安心してリラックスできるようにさせる。
あとは、知ってる人と話すとか、好きな食べ物を…

…あっ、エネルギーの補給ならハンバーガーで決まりね。
買ってくるわ。

リン
慌てないでアンビー。
「11号」の好物はハンバーガーじゃないよ。

アンビー
違うのね。
じゃあ何が好きなの？

アキラ
どうやら、もう「トリガー」が買いに出かけたようだ。

リン
麺屋錦鯉の近くにいると思う。
そういえば、チョップ大将も「11号」のことを心配してたっけ…
大丈夫だよって伝えといてくれる？

アキラ
「11号」は僕たちが面倒を見ておくよ。
安心して行ってきてくれ。

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アキラ

僕たちと話していていいのかい？
確か、ラーメン屋で「トリガー」さんと落ち合うんじゃ…

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「トリガー」がラーメンを買いに行った。
彼女を探して、話してみましょう。

…ラーメン屋に行きましょう…

「新しい戦友」
「11号」の新しい戦友として、面倒を見てあげられることを証明して欲しいと、アンビーは「トリガー」に話した。

「トリガー」
あの親切なおじ様から、「11号」の大好物である激辛ラーメンを買ってきました。

スープの赤さは目視できませんが…
唐辛子の成分が湯気に溶け込んでいるせいか、いまにも涙が出そうです。

アンビー
こんなのが好きだったなんて…
知らなかった。

「トリガー」
少なくとも、私が知ってる彼女はそうですね。
任務の合間にも暇さえあれば、いつもここに来ておりました。
もしかすると、彼女にとっては軍のキャンプよりも、六分街の方が居心地が良かったのではないかと…
口数こそ少ないですが、トレーニングや戦績、昇進の話以外では、いつもこの辺りのことを話題にしていて。
激辛ラーメン、ビデオ屋、ゲームセンター、猫…

アンビー
私のことは――

何か話してた？

「トリガー」
あなたの気分を害してしまうかもしれませんが…
「11号」が「アンビー」について言及したことは、ありません。
ただ、「裏切り」の件には、とても思うことがあったようです。
どうやらかつての彼女には、かけがえのない、憧れの存在がいたそうです。
その人は、謎の理由で姿を消し、一夜にして離れ離れになってしまったとか。
その人は言伝一つ残さなかったようですから。
軍ではこのような脱走は「裏切り」とみなされ…
時が経てば、無関心で冷淡な将校たちによって死亡扱いとされることになります。
何か、心当たりはございませんか？

アンビー
私からは何も。
彼女が私を恨むのは、彼女の自由だから。

「トリガー」
それは…
私でも聞くに堪えない酷薄さですね。
一つ、アドバイスがあるのですが…

アンビー
アドバイス？

「トリガー」
もし「11号」との関係を修復したいなら、彼女の前でそんなことは言わないでください。
どうか、お願いします。

アンビー
でも、これは事実よ…
説明することは何もないもの。
私が軍を離れた時は…
何も覚えてなかったの。
記憶が戻ったあと、彼女に連絡したくて、ニコに彼女の近況を探ってもらった。

アンビー
そこで――

彼女が元気に過ごしてるのを知ったわ。
オボルス小隊に加入したこと、栄誉ある兵士になったこと、昇進したこと…
彼女にはもう新しい隊長と、仲間がいる。
シルバー小隊の過去は彼女にとって重荷になると判断した。
もう、私が彼女の前に姿を見せる理由はないの。
「トリガー」。

「トリガー」

…はい？

アンビー
教えて。
あなたが私だったら、同じ判断をする。
そうでしょう？

「トリガー」
私があなたであれば、そうしたかもしれませんね。

アンビー
うん。
だから恨まれても、それは私の自業自得——

「トリガー」
しかし、私はあなたではありません。
アンビー。
そこに違いがあります。

アンビー
……

「トリガー」
私なら…
「11号」にこう伝えます。
あなたは裏切られたわけでも、切り捨てられたわけでも、見捨てられたわけでもない、と。
戦友として、決してあなたを諦めたことはなくこれまでも全力で探してきました。
けして、あなたのことを忘れたりなどしない。

アンビー
「トリガー」…
すごいわ。

「トリガー」
…感想はそれだけですか？

アンビー
本当にそう思ったから。
あなたと戦友になれる人は、きっと心強い。

「トリガー」
そんなことは、全くありません…
ですが、私たちが今話すべきことでもありませんね。
アンビー、あなたはこれから…
どうするのですか？

アンビー
もちろん、あのホロウに戻るわ。
ツイッギーと決着をつけなくちゃ。
シルバー小隊の技術は、存在し続けていいものじゃないから。
でもその前に…
「11号」に謝っておきたいわ。

「トリガー」
謝る？
記憶に問題がある状態の彼女に謝罪したとして、覚えているかどうかわからないと思いますが…

アンビー
それでいいの。

「トリガー」
そうですか…

アンビー
ええ。
弱虫な私にとっては、それでいいの。

「トリガー」
あなたの精神的な負担は、ことのほか大きいもののようです。
私に何かできることがあれば、言って頂ければ。

アンビー
なら、証明して。

「トリガー」
証明とは何を？

アンビー
あなたに、「11号」を任せてもいいか。
私も安心して新しい戦友に彼女を託せるし、後顧の憂いもなくなるわ。

「トリガー」
後顧の憂いがなくなったからといって、あまり無茶をされても困るのですが…
わかりました。
証明してご覧に入れます。

いずれにせよ、早く戻りましょう。
負傷者に伸びたラーメンを食べさせるわけにはいきませんから…

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チョップ大将
はあ…お？
ああ…
アンビーじゃねぇか。
お前さんがこんな時間にラーメンなんて珍しいな。
今日は何にするんだ？

①焼きサバラーメン

アンビー
焼きサバラーメン1つ、テイクアウトで。

チョップ大将
あいよ！
すぐできるから、ちょっと待ってな。
…大層サバが好物っていうお客がいてよ、あんまりサバサバうるせぇからこのメニューを作ってやったんだ。
それがいざ出してみりゃ、値段の割にうまいってんで意外と売れちまったんだな、これが。
タンパク質と炭水化物をお手頃な価格で、ってな――

わざわざこいつのためにラーメン食いに来たってお客もいるくらいだ。

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②ハンバーガー丼ギョウザラーメン

アンビー
ハンバーガー丼ギョウザラーメン一つ、テイクアウトで。

チョップ大将
お前さん、アンビーだよな…？
見知った顔して悪魔みてぇなこと言いやがるじゃねぇか…
悪いがそんなはねぇよ！

アンビー
そう。
なら、普通のハンバーガーラーメン…

チョップ大将
そいつもねぇ！
なんだ「普通」って！？
――ったく、いつものやつでいいんだな？

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③三倍から三十倍まで激辛ラーメン

アンビー
この…
三倍から三十倍まで激辛ラーメンを1つ、テイクアウトで。

チョップ大将
おうよ。
しっかし、お前さんがそいつを頼むとはな。
こいつは今日メニューに追加したばっかでよ。
長いこと来てねぇお客のことを思い出して、ついな…

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チョップ大将から出来上がったラーメンを受け取った。
ラーメンから、ふわりと湯気が立ち上る。

アンビー

…チョップ大将…

…安心して。
彼女は今…
無事だから。

チョップ大将
なんだって――！？
お前さん、その「彼女」ってのは…

アンビー
「ちょっと」、私と顔が似ている子。

チョップ大将
なるほど、やっぱあの嬢ちゃんか…
そうか無事だったんだな…
よかった、本当によかった。
アンビー、あの娘ちゃんに伝えてやってくれないか。
俺がこんな時間まで店を開けてんのはお前さんのためなんだ…
てめえのこと済ませたら、ラーメンを食いに来い！
チョップ大将はいつまでも待ってるぞ…ってな！

アンビー
…ええ、伝えておくわ。
ありがとう、チョップ大将。

チョップ大将
ガハハ、こんな良い知らせを聞かせてもらっちゃ、金なんて取れねえってなモンよ！
ちゃんと嬢ちゃんには伝えといてくれよな！

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プロキシ先生を巻き込みたくはなかったけど…
ひとまずは状況を説明しなきゃ。

…プロキシ先生と話しましょう…

アンビー

すごく、迷惑をかけたみたい…

アキラ
その通りだ。
これはぜんぶ邪兎屋にツケておくべきだな。

アンビー
…ダメ！

アキラ
うん？

アンビー
今の私は、邪兎屋のアンビーじゃないから。

リン
そう言われてもねぇ…
歩き方だって、喋り方だって、それに見た目だって、ぜーんぶ「邪兎屋の「アンビー」だよ。
でしょ？

アンビー

……

リン
うっ、そんな顔されたら、イジワル言えなくなっちゃうじゃん…

はいはい、わかったわかった！
あんたすごく疲れてるみたいだよ、今はとにかく休も！
私のベッドでひと眠りするのはどう？
柔らかくて、ふっかふかだよ〜

アキラ
確かにそうかもな。

僕もリンに賛成だ。
少し休んだほうがいいと思う。

アンビー
…でも、明日…

アキラ
明日のことは明日考えればいい。
…電気料金の高額請求が来た時なんかは、僕たちもそうしている…

リン
あっ、ひょっとしてまだ寝たくなくて、気分転換に映画でも見たいとか？
それなら付き合ってあげなくもないよ？

アンビー
……

…………
…最近の映画で、おすすめ…

ある？

アキラ
本当に映画が見たかったとはね。
けれど、アンビーが元気を取り戻しつつあって嬉しいよ。

アンビー
うん、これからやらないといけないことは…
ちゃんと集中しないと、できないことだから。

リン
できないこと？
やっぱり戦うとか？

アンビー
近いかも。
でも、デートだから。

リン
デート――！！！？？？

アンビー
ええ。
じゃあ、おやすみなさい。

＞≪因縁≫