シルバーの復活(中)/在りし日の鋒鋩

襲ってくる敵を倒して、今はなきシルバー小隊の隊長の腕前を見せてやろう。

依頼人:アンビー
場所:【?】
目標:襲ってくる敵を倒す

「トリガー」
時間通りですね。

アンビー
昔…
時間に遅れた兵士には、腕立て伏せをさせていたから。

「トリガー」
「11号」もそうでした。
彼女は知り合ってから、ただの一度も約束を破ったことはありませんでしたし、連絡してこなかったことも…
……

アンビー
きっと見つかるわ、「トリガー」。
あ、「トリガー」って呼んでもいい?

「トリガー」
どうぞ。
これより響きが良い名前はありませんから。

アンビー
今回の戦闘は、私一人でやるわ。
私が戦ってるところを見てくれれば、それでいい。

「トリガー」
分かりました。
必要と判断した際には援護いたしますので、ご安心ください。

「トリガー」
では、あなたの戦う姿を「観察」させてもらいますね

アンビー
ダメ、敵が弱すぎる。
この程度じゃ、私の戦いを披露したうちに入らない

「トリガー」
あなたはそういうことを言わないタイプかと…

「シルバーの過去」
シルバー小隊が研究していたこととは、兵士のクローンの量産――
かつてシルバー小隊の隊長だったアンビーが、そんな裏事情を語った。

「トリガー」
なるほど…
あなたは確かに、「あの」アンビーですね。
間違いありません。
個々の戦闘スタイルは、生死の狭間でなかば本能的に醸成されるもの…
履歴書や建前よりも、ごまかしが効かないものでしょう。
あなたと「11号」は…
攻撃のパターンも、エーテルの使い方も…
ほぼ、完全と言っていい程に一致しておりました。
信じられません。
まるで、あなたたちは…

アンビー
姉妹よ。
――もっとも「姉妹」という言葉の意味に、「同じ素体から作られたクローン」が含まれるなら、だけど。

「トリガー」
それは、つまり…
シルバー小隊に関する軍内部の噂は、すべて事実なのですか…?

アンビー
あなたはどこまで知ってるの?

「トリガー」
シルバー小隊がもう存在しない、ということのみです。
生物学的手段で、兵士を量産する?
…そのような事ができるはずありません。

アンビー
…私の知る限りでは、知能構造体以外はみんな、生物学的手段で生まれてくるはずよ。
コウノトリの伝説だってそう。
だから…
一人作るのも、百人作るのも、結局のところあまり変わらないわ。

「トリガー」
…それは何かの冗談でしょうか?

アンビー
ええ。
ごめんなさい、面白い冗談が言えなくて。

「トリガー」
いいえ、私の方こそ申し訳ございません。
軍にそこまでの技術力はないと思っていましたので…
驚きました。
兵士の量産…
そんなことが可能なのであれば、何故…

アンビー
――クローンという肉の壁があるのに、どうして替えのきかない人間の兵士が死地に送られるのか…
でしょう?

「トリガー」
…せめて、もっと控えめな表現で言いたかったものですから。

アンビー
大丈夫、私はこんなことで怒ったりしないわ。
クローンはコストが高いから――
彼らは、きっとこう答えるでしょうね。
一人で戦場を左右できるシルバー小隊の兵士…
その一人当たりのコストは、優秀な将校を育成するのにかかる弔慰金を含めた全額と比べても、そう変わらないはずよ。
肉体や意識は重要じゃない。
価値があるのは、抜きんでた身体能力や頭脳、反射神経。
完全に解析されないまま研究が中止になったことで、それはより貴重になった。
「量産」しても、優秀な素質が完璧に継承されるとは限らなかったから。
そして彼らはこう言うの…
「欠陥品」に、兵士としての価値はない。

「トリガー」
アンビー…
私はそういうつもりでは…

アンビー
ええ、わかつてる。
でも、そういうつもりの人もいるわ。
私たちを利用しようとする人たちは、常にいるの。
だから、シルバー小隊は滅んだのかもしれない。
私はあの人たちのことを許すつもりはないわ、誰一人として。
私にとって唯一の幸運は、この不幸そのもの。
シルバー小隊の壊滅と一緒に、この罪深い技術も失われたから。
少なくともそう思ってた。
…今までは。

「トリガー」
「シルバーの復活」。
――この技術を蘇らせた人物がいると?
「11号」が拉致されたのも、この件が関係している…
今の状況ではそう推測するのが妥当でしょうね。
しかし、私が知る限りでは、当時の資料はすべて焼却されたはずです。
もしや防衛軍の内部に…
いえ…
違いますね。

アンビー
どうしたの?

「トリガー」
もし、軍が秘密裏に技術を復活させようとしているのなら、「11号」を拉致するという回りくどい手段をとる必要はありません。
仲間だからこそ分かります。
彼女は上層部からの命令であれば、大人しく手術台に横たわるでしょうから。

アンビー
…そう。
今の彼女は…
そういう感じなのね。

「トリガー」
彼女は忠実な兵士の模範です。
あなたの記憶の中の「11号」とは違うのですか?

アンビー
私の記憶に…
「11号」という名前はないわ。
あるのは…

「トリガー」
何故、エーテリアスがこれ程に…

アンビー
このエーテリアスたちを追い込むような陣形…
知ってるわ。

「トリガー」
なんですって?

アンビー
――シルバー小隊の遺産の一つよ。
前線で直接戦うよりも、こういうことが得意な「姉妹」がいたの。
とにかく、先に敵を倒しましょう。
この裏にいるのは、恐らく私たちが探してる人物のはずよ。

アンビー
TW-CA参式…

「トリガー」
あの陣形の名前ですか?

アンビー
この懐かしい感じ、気に入らない

「トリガー」
感傷にひたるのはお嫌いですか?
また少し、あなたを知ることができましたね

【?】がぞう

「トリガー」
アンビー、あの人が着ているのは…?

アンビー
…当時の、シルバー小隊の制服よ

「トリガー」
そうですか、では追いかけましょう


>裂け目

「ツイッギー」
「11号」をさらった人物は、かつてのシルバー小隊の姉妹、ツイッギーだった。

とある建物の中のラボ――

片目の少女
はぁ…はぁ…
流石は隊長ね…
あの身のこなし…
昔と変わらない…
本当に眩しいわ。
私、あの人の「欠陥品」になら、なってもいい…
やっぱり「シルバー小隊」には、隊長がいなくちゃ…
…ちっ、痛むわね。
A、くすり持ってきて。

少女A
……

片目の少女
痛っ…!
「欠陥品」中の「欠陥品」が…
口の次は神経まで使えなくなったの?
もっと丁寧にやりなさい!

少女A
……

片目の少女
どうして痛みって、感覚の残ってる部分が少ないほど強く感じるのかしら。
不思議…

少女A
……

ツイッギー
こんな難しい質問、あなたに答えられるわけないわね。
バカだから。

少女A
……

ツイッギー
もういいわ、そんな情けない声出さないで。
それより、私たちの「実験体」は…
まだ生きてる?

片目の少女A
……

「振り返れば絶望」
ツイッギーは過去のある事件で四肢を失った。
「11号」をここにさらった目的とは、彼女の体組織を摘出して実験をすることだった。

ツイッギー
ふふっ…
ここにいたのね。
今の名前は…
「11号」だったかしら。
可愛くない名前。
でも…
お顔は本当に可愛い。
可愛らしくて…
可哀想。
今の私とあなたに共通点があるとしたら、この顔だけね。

「11号」
……

ツイッギー
あなたと違って、ツイッギーに手足はもうないの。
私はもう、「シルバー小隊の完璧な隊員」じゃない。
実験のためには、完全な体じゃないといけないの。
だから、あなたが必要なのよ。
どうしてこうなったかって…
知ってるでしょう?
あの日、あなたが来なかった日…
アンビー隊長はね、自分と引き換えにあなたを助けたのよ。
彼女ほど強い人でも…
一人しか助けられなかった。
なんで、助かったのがあなたなの?
どうしてツイッギーじゃなかったの?
ねえ、教えて?
どうして?
みんな死んだ。
私は…
いくつもの死体に押し潰された。
発見された時、私の手足は侵蝕が進んでてね…
動けなかったの!
抵抗もできなかった!
私はこの街を守りたいだけの兵士だったのに…
私、私は――

「盗み聞き」
ここに辿り着いたアンビーは、現在の状況を把握した。

少女A
……

ツイッギー
ビックリさせないで!
死にたいの!?

少女A
⋯⋯

ツイッギー
はいはい、分かってるわよ。
あいつらが今日のブツを取りに来たんでしょ?
ちょっと片付けてくるわ。
話の続きは…
後にしましょう。

【?】同時刻、ラボの外。
霜で覆われた冷たい扉に体を寄せたアンビーと「トリガー」は、険しい表情で中の動向に耳を澄ませている――

「トリガー」
「11号」はここに閉じ込められているようですね。
ここからのプランでは、どう動きますか?

アンビー
プランは…

「トリガー」
シーッ、続きはあちらでお話しましょう。

【?】がぞう

「トリガー」
アンビー、ここからのプランは?

アンビー
簡単よ。
「プロらしく」――
地図がなくても説明できる。
潜入して、「11号」を助け出す。

「トリガー」
なるほど、では続きを。

アンビー
以上よ。

「トリガー」
それだけですか?

アンビー
ええ。
外で待ってて。

「トリガー」
……
………………

アンビー
これは私一人で決着を付けないといけないの。
完遂できる人がいるとしたら、それは私だけ。

「トリガー」
…あなたたちシルバー小隊は、いつもこういう風に戦っていたのですか?

アンビー
そう、私が隊長だったから。
でもあの頃は大体、予備のプランも用意してたわ。
その予備プランを担当していたのが…
ツイッギーよ。

「トリガー」
ツイッギー、ですか。
聞き間違いでなければ、いま直面している敵の名前みたいですが。

アンビー
そう。
でも…
私にも分からないの…
どうして彼女が今のようになってしまったのか。

「トリガー」
彼女の「予備プラン」とは…
どういうものだったのでしょうか?

アンビー
弱みを見せて油断させてから、最後に奇策で逆転するの。
彼女は形勢を逆転させるためなら、どれだけ損をしても厭わないタイプだった。

「トリガー」
まさに予備プラン、といった感じですね。
そのようなプランを使うのは、本当に追い詰められた時だけでしょうし。
いつでも連絡できるように、通信を繋いでいます。
アンビー、決して無理はしないでください。
もしあなたに何かあれば――

アンビー
私だけでは「11号」を助けられない、でしょう。
大丈夫、気をつけるわ。

「トリガー」
…あなたを気遣う言葉をかけるつもりでした…
必要ないのであれば、忘れてください…

「ラボに潜入」
アンビーはラボに潜入した、ツイッギーは気づいていない様子だった。

アンビーは見張りがいないダクトからラボに侵入した。
鉄製のダクトは骨の髄まで凍るように冷たく、彼女の肌に痛みが走る…

アンビー
ここは…
とても寒いのね。

「トリガー」
外からでも分かります。
空気の匂いも妙ですね。

ツイッギー
ドンドドドンドン…

アンビー

「トリガー」
誰か来たようですね…
隠れられますか?

アンビー
…大丈夫、ここは暗いから…
それに機械の音も大きいし、気づかれないと思う。

ツイッギー
あら?
まだ目が覚めてないの、「11号」?
あなたの体からけっこう細胞を取ったし、薬の実験もしたけど…
このくらいでギブアップなんてしないわよね?
ね?
末っ子だから…
甘えん坊なのね。
でも、ダメ。
ツイッギーお姉ちゃんと一緒に遊びましょう?

「11号」
……

ツイッギー
そうそう、そうでなくっちゃ。
話の続きをしましょう?
私、どこまで話したかしら?
…ああ、そうだった。
手足を失くした私が、優しいゴミ漁りに拾われたってとこね。
ふふっ、優しい人たちだったなあ…
あの人たち…
私を売ったのよ。
でも残念、買い手の足りない頭じゃ、私みたく手足のない肉塊の使いみちは想像できなかったみたい。
だから、また売られた。
私は闇市に流れて、いろんな商品やいわくつきのブツ、特殊な改造を施されたボンプと一緒に、オークションにかけられたわ。
あの時…
シルバー小隊って、血と肉でできたボンプみたいだなって気づいたの。
肉と金属の唯一の違いは…
もっと痛いってこと。
そして私は、彼女に出会った。

「暗い過去」
ツイッギーの話によれば、彼女のシルバー小隊を復活させる研究は、とある組織から資金援助を受けているみたい。

ツイッギー
彼女は闇市で手足のない私を買い取ると、お腹を切り開いて、臓器を確認したの。
知ってるでしょう?
私たちには麻酔が効かない…
ふふっ、痛すぎて死んじゃうかと思った。
その時、彼女は微笑んだ。
今思うと…
私の体の異常に気づいたんでしょうね。
彼女は元軍医だった。
軍を除隊させられてから、闇医者をやってるそうよ。
シルバー小隊のことはよく知ってるから、私を助けてくれるって。
そのあとは何度も手術を受けて、機械の体を手に入れたわ。
安物のパーツでも別に良かった。
戦うつもりはなかったし、立って、字を書いたり計算ができれば十分だったから。
私の価値は…
私の記憶。
壊れてなかったのは脳だけだから。
だから、覚えてるの。
家の感覚、姉妹たちと過ごした日々、私たちに向けられる期待…
全部覚えてる。
隊長がいれば、私たちシルバー小隊はずっと最強だって…
研究を手伝って、私自身の手で姉妹たちをこの世に迎えたこともちゃんと記憶にあるわ。
あの闇医者は、独自の伝手で不完全な研究資料を見つけた。
あとは私の記憶の断片を辿りながら、検証し補って…
シルバー小隊の技術を再現できたの。
全部覚えてて良かった。
生き残りで、すべてを覚えてる私がシルバー小隊を復活させなくちゃ。
それが使命。
ここは私の、私たちの家だから。

「戦いを控えて」
アンビーが見つかった、ツイッギーと戦うことになった。

ツイッギー
それで、私の計画、気に入ってくれた?
…アンビー隊長。

アンビー
…いつ気づいたの?

少女A
⋯⋯!

ツイッギー
私の子犬がとっくに気づいてたわ。
指示を飛ばして、もう人を呼ばせてる。

アンビー
…⋯

ツイッギー
隊長が会いに来てくれて、本当に嬉しい。
ちゃんと話しておかなきゃって、ずっと思ってたの。

アンビー
彼女を返して。
そのあとで、ちゃんと話を聞くわ。

ツイッギー
欲しいなら奪りにきて。

【?】アンビーはラボから飛び出し、「トリガー」との合流場所に向かった――

アンビー
「トリガー」!

「トリガー」
説明不要です、状況は把握しました

「今と昔」
苦しい事情を抱えたツイッギーを前に、アンビーは一緒に罪を償おうと提案したが、ツイッギーは断った。
彼女は「11号」をアンビーに返し、なにやら別の狙いがある様子を見せた。

ツイッギー
さっすが、アンビー隊長。
こんなクズ共、あなたの剣のサビにしかならなかった。

少女A
⋯⋯?

ツイッギー
うるさいわね、バカ。
「どっちの味方か」なんて私は私の味方に決まってるでしょう?
ただ、あなたは私が作ったからアンビー隊長の全盛期を知らないのね。
あんなことがあったんだもの。
忘れると思っていたのに…
はっきりと覚えてるわ。
隊長、軍の制服はもう捨てちゃった?

アンビー
ツイッギー…

ツイッギー
私だったら、パジャマに使うわ。
毎日、過去の栄光と苦悩に包まれながら眠るのよ。
素敵でしょう?

アンビー
ツイッギー、あなたが生きてること…
今日まで知らなかった。

ツイッギー
私はいつも戦闘が一番苦手だったから。
そんな私が生き残るなんて、隊長が予想できなかったのも当然ね。

アンビー
あなたは戦闘が苦手だったわけじゃない。
たとえ力が足りなくても、それを補って余りある頭脳があったわ。

ツイッギー
そうね。
あなたがそう言ってくれたこと、もちろん覚えてるわ。
私を残すよう研究員を説得してくれたし、「自分の価値を正しく評価して」って励ましてもくれた。
そう、私には価値がある。
今になって、それを理解したわ。
役立たずは簡単に死ねるけど、私は違う。
私には大切な価値があるから。
…そして、それを見出してくれる誰かがきっと現れるの。
昔のあなたみたいに。
時々、思うの…
私がシルバー小隊じゃなかったら、って。
ただの新エリー都市民だったら、今頃はホワイトスター学会にいたかも。
「特定のホロウにおけるエーテルの3つの形態」…
とか研究してたのかな?
私は確かに頭が回るけど、賢さにもいろんなタイプがあってね。
利益を奪い合い、嘘を見抜き、限られたリソースでこの世界を生きぬく知恵なんて、シルバー小隊で育った私は、持ってなかった。
全部…
この数年で少しずつ学んだけどね。

アンビー
辛かったのね。
それが、あなたがこんなことをする理由?

ツイッギー
理由なんて必要ないわ。
少なくとも、あなたを説得する必要はないもの。
私はただスポンサーを納得させられたら、それでいいから。

アンビー
あなたは誰よりシルバー小隊の罪深さを知ってるはず。
こんな技術は二度と使われるべきじゃない…

ツイッギー
罪深い?
あなたや私、そして姉妹たちが…
みんな罪を背負ってるって言いたいの?

アンビー
私たちは、罪そのものよ。

ツイッギー
だから、私たちは滅ぶべきだって?

アンビー
少なくとも、罪の中で生き続けてはいけないわ。

ツイッギー
ああ、なるほど。
勉強になったわ、隊長。
ハンバーガーを食べて、映画を観て、仕事を見つけて、人とデートするのが私たちのすべきことだった…
手足を失くして、痛めつけられて、売り飛ばされて、必死に生き残るべきじゃなかったわけね?
アンビー隊長、あなたのことは好きだし何があっても嫌いになんてなったりしないわ。
でもね、だからって私の前で、そんなことを軽々しく口にしないで——

アンビー
私の居場所は分かってる、そうでしょう?

ツイッギー
……

アンビー
私がどこに住んでいて、どんなハンバーガーを食べて、どんな映画を観て、どんな人と会っているのか…
全部、知ってるんでしょう?
なら…
私を探しに来て、ツイッギー。

ツイッギー
……!

アンビー
私はあなたの隊長。
あなたにふさわしい罰を、私が直々に与えるわ。
そして…
一緒に罪を償う。

ツイッギー
隊長…

アンビー
あなたが、更なる過ちを犯す前に。

ツイッギー
……………………

アンビー
事態が深刻になる前に見つけられて良かった、ツイッギー。
ちゃんと話さないといけないことが沢山あるけど、それはまた今度にするわ。
今は…

【?】言葉は遮られた。
アンビーは呆然とした表情で、目の前に投げつけられた人の体を見つめる…
それは青ざめた顔の「11号」だった。
幸い、体がまだわずかに動いており、呼吸をしている。

ツイッギー
お気に入りを返してあげる。
これで貸し借りはなしよ、アンビー。

アンビー
ツイッギー?

ツイッギー
貸し借りなしって言ったの。
今後、二度と隊長面してお説教なんてしないで。

【?】ツイッギーはぐったりした「11号」を蹴り飛ばした。
アンビーは即座に前に出ると「11号」を抱きあげ、「トリガー」に引き渡す。

「トリガー」
「11号」!
ああ、起きてください、「11号」…
アンビー、彼女の容体は極めて危険です。
直ちにホロウから脱出致しましょう。

アンビー
…分かった。
ツイッギー…
必ず戻ってくるわ。
あなたを一人にはしない。

ツイッギー
気持ち悪い。
やめてって言ったでしょ。
私と同じ顔が、いらないお節介を焼いてこようとするのは耐えられない。

アンビー
節介は焼いてないわ。
顔は…
慣れてくれたらいいのだけど。
…行きましょう、「トリガー」。

【?】…ツイッギーは去っていくアンビーの姿をじっと見つめていた。

ツイッギー
ねぇ、「あの人」に繋げて。

少女A
……!

ツイッギー
○○○○○、私だって分かってるわ!
仲介抜きにスポンサーと直にやり取りすることが、危ないってことくらい…
でも、見たでしょ?
彼女が集めたクズじゃ、何も変えられないの!

少女A
……

ツイッギー
唯一のチャンスは、アンビーが弱くなってることよ。
あのすべてを顧みず、壊しつくすような…
最大の強みともいえる戦い方を彼女は捨てた。
今のアンビーは家族を養ってる傭兵みたい。
お給料をもらうまでは死んでも死にきれない、そんな感じのね。
彼女の使い方には考えがあるわ。
…ぜんぶ守らないと…
じゃないと私の…
今までの…

低い男性の声
…ここまでよくやったな。
小娘。

ツイッギー
その呼び方はやめて。

低い男性の声
お前の研究はとても貴重だ。
我々は共に…
この世界で唯一、力を注ぐ価値のある仕事をしている。
人々に希望を与えるという仕事をな。
しかし、希望が訪れるその時までは、絶対的な暴力でしか解決できないこともあるだろう。
そのことも、もちろん理解している。
前に話したものは、お前の助手に取りに来させろ。
ただし、これは「新」エリー都の技術というわけではない、せいぜい扱いには気をつけることだ。

>≪昔と今≫

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