涙と過去を埋めて(下)/身を賭して策を打つ

ヒューゴが仕掛けた盤上に残されたのは、勝負を決める最後の一手のみ。
ハルトマンの違法行為を証明する決定的な証拠を手に入れよう。

依頼人:ヒューゴ
場所:【?】
目標:ハルトマンの違法行為を示す重要な証拠を集める

ヒューゴ
近頃、レイヴンロック傘下の企業から労働者が数多く失踪している…
聞いたか?
俺は彼らの行方を知っている
あれはレイヴンロック家の連中だ。
周りにいるのが騙された被害者だろう

ライカン
行くぞ、彼らをここから連れ出す

作業員たちを縛るロープを解いてあげた…

怯える作業員
よかった、助けが来ました!
ありがとうございます…

ヒューゴ
礼には及ばないよ。
それで、話してくれるかね?
さっき逃げたレイヴンロック家の人たちに、一体何をされたんだい?

怯える作業員
あいつら…
みんな嘘つきです!
わざと俺たちを騙してこのホロウに来させて!
最初は高収入の仕事があるって聞いて着いていったんです、でもここに入ってきてからだんまり決め込まれて、怪しいと思って、途中で抜けようと思ったんです…
そしたら奴ら本性を現して、みんな拘束されたんです!
それに俺たちをどこかに運ぶとか言って…

ヒューゴ
…連中に変わった薬など飲まされていないだろうな?

怯える作業員
薬?
それはなかった気が…
ですが、騙された人はまだいます、一部の人はあっちに向かいました!

ライカン
状況は把握致しました。
こちらのキャロットを共有しましょう、近くに出口がございます、速やかにここを離れてください。

怯える作業員
ありがとう…ございます…!

ライカン
行こう、ヒューゴ。
残りの人を助けるんだ。

ヒューゴ
随分と積極的だな。

傲慢な男性
このハエ共、どこから入ってきやがった!
面倒くせぇ、始末しちまえ!

ヒューゴ
できるものならな

ヒューゴ
ここにも労働者が…
かなりの数だな

作業員たちを縛るロープを解いてあげた…

疲れた作業員
あ…あなたたちは…?

ライカン
助けに来た者だ。

疲れた作業員
ありがとう、ありがとう…
はぁ、実はあの人たちのこと、前から怪しいと思っていました…
やはりまぐれは期待していいものじゃないんですね…

ヒューゴ
レイヴンロック家の人間に何かされなかったか?

疲れた作業員
何かされたかって…?
言うことを聞かないからって、みんなロープで縛られたんですけど…

ヒューゴ
…ならいい。

疲れた作業員
あ、そうでした!
この先にまだ作業員がいます、早足だったから…
多分今は、屋上の方にいると思います!

ヒューゴ
安心したまえ、俺がなんとかしよう。
君たちは隙を見て、ここから離れるといい。

ライカン
…先へ進もう。

ライカン
…それもハルトマンの陰謀と関係が?

ヒューゴ
当然だ。
奴は労働者を讃頌会に献上しようとしている
奴にとっては人も資源だ。
ホロウでエーテルを掘り出すことと大差ないのだよ

【?】がぞう

「遅れてきた信頼」
ヒューゴはレイヴンロック家が労働者を欺き、薬を飲ませる証拠を密かに集めた。
ライカンは人々を助けたいという衝動を抑えつつ、今回はヒューゴが誓いに背かないと信じることにした。

ライカン
向こうにもまだいる。
急ぐぞ。

ヒューゴ
…今回は状況が違う。
助ける前に、連中の話を聞いておきたい。
計画を盤石にするためには、より直接的な証拠が要るからな。

おびえた労働者
あ、あんた…
約束してくれた報酬は、ちゃんとくれるんだろうね?
あんたたちについてってホロウで簡単な仕事をすりゃ、ディニーやらなにやらたくさんくれるって話だけど…
ほんとかどうか、疑わしいもんだね!

横柄な男
道中もあれこれ聞いて来やがったのに、まだ足りないか?
疑わしいというなら、なぜ申し込んだ?

おびえた労働者
どうしようもなかったんだよ!
娘がホロウに巻き込まれて、ひどい侵蝕だったんだ!
貯金は治療費に消えたし、もうこうするしか…

震え上がる労働者
お、俺だってそうだ!
うちの年寄りは重病で、この金が入るのを今か今かと待ってるんだ!

青白い顔の労働者
万策尽きてなけりゃ、ホロウに入ってまで仕事をするなんて…
そんな危ない橋を渡るもんか!
けど、すこし怪しいくらいなんだ。
最後に金が手に入るなら、なんだって投げ打つさ。
それこそ命だってな!

獰猛な男
……

おびえた労働者
なあ、あんたたちレイヴンロック家の人たちだろう…
TOPS傘下の大企業にかぎって、騙して悪いが…
なんてことはないよね?

獰猛な男
安心しろ。
約束した金は、一分も欠けることなく支払う。
だが、正式に仕事を始める前に…
まずはこの薬を飲んでもらわねばならない。

厳つい男が白い錠剤を取り出し、その場にいる労働者たちに一錠ずつ配った。
もう一人いたレイヴンロック家の人間は何か疑問を抱いたのか、そばに寄って小声で彼に何か話しかける。

横柄な男
…兄貴、こんなに早くやっちまうのか…?

獰猛な男
こいつらは口数が多すぎる。
このまま引きずり回してたら時間が無駄になるからな。
…それに、早く飲ませれば早く終わる。
こいつらにとっても、楽になるのは早い方がいいだろ。

震え上がる労働者
何だって?
薬を飲まされるなんて、聞いてないよ!

横柄な男
これはいいものだぞ。
飲めばお前たちのエーテル適性は跳ね上がる。
外じゃ欲しくても手に入らないんだからな!

獰猛な男
その通りだ。
お前たちはこれからホロウで何時間も働くことになる。
この薬は必ず飲め。
飲まなければ次の仕事には移らせない。
拒否するならここまでだ。
もちろん、そうなったら報酬もパアだがな。

ライカン
……

ヒューゴ
おい、何してるライカン?

ライカン
彼らを助けるに決まってるだろう。
あの錠剤は見るからに怪しい、絶対に飲ませてはダメだ。

ヒューゴ
いま出て行くのは得策ではない。
さっきも言ったぞ。
計画を盤石なものとするには、より直接的な証拠が要るとな。

ライカン
お前の目的のために、罪なき人々を利用するな。
何年か前にも、オレは同じことを言ったな。

ヒューゴ
…なるほど?
貴様の目にはそう映っているわけか。

ライカン
心外だと思うのなら、すべてきちんと説明しろ。

ヒューゴ
……
わかった、だが色々と込み入っているものでね…
ネタばらしだけをすると、彼らに危険はない。
もちろん、俺を信じるかどうかは貴様の自由だ。
とはいえ貴様が飛び出して行くつもりなら、俺は止めるぞ。

ライカン
……
お前を信じよう。

労働者たちもすでに決断を下していた。
口数の多いあの労働者を除き、大半の者はすでに錠剤を飲んでいる。
そしてレイヴンロック家の人間はついに本性を現し、「いまさら逃がすわけがないだろう」と、力ずくでその労働者の口に錠剤を押し込んだ…
眼前の光景をしっかり撮影し終えると、ヒューゴはふう、とひと息つく。

ヒューゴ
よし、証拠は手に入れた。
これで思う存分やれるな。
文字通り、死ぬほどぶん殴っていいぞ。

ライカン
…忘れるな。
お前はオレに説明する義務がある。
それと、本当に殺すなよ。
たとえレイヴンロック家の人間であってもだ。

ヒューゴ
わかっているとも、聖人君子どの。

頭の切れる男性
お前たち何者だ!

ヒューゴ
当ててみるのはどうかね?

ライカン
…お前たちを止めに来たんだ

ヒューゴ
これほどスムーズに連携できたのは久しぶりじゃないか?

ライカン
…ああ

ヒューゴ
足の具合はどうだ?

ライカン
悪くない

ヒューゴ
実のところ、俺は前のファイトスタイルが好みだったがな
今よりもずっと無慈悲だった

ライカン
力加減を覚えただけだ
必要に迫られれば、容赦はしない

「揺るがない証拠」
ヒューゴはレイヴンロック家を罠にかけた。
自ら薬の効果に耐え凌ぐことでデータを集めて解毒薬を開発し、労働者への薬をビタミンにすり替えたことで、重要な証も押さえられた。
それを聞いたライカンは、後ろめたさを感じた…

レイヴンロックの族人たちを打ち負かした…

横柄な男
くそっ、お前たち一体何者だ!?
レイヴンロック家を敵に回して、どうなるか分かってるんだろうな!?

ヒューゴ
レイヴンロック…
今のうちにその名をたくさん口にしておけ。
すぐに消えてなくなるのだからな。

獰猛な男
…どういう意味だ。

ヒューゴ
その通りの意味だとも。
だが貴公にとって、あるいは良いことかもしれんな。
早いうちに見切りをつけるべきだ。
貴公にはまだ、よりマシな道を選ぶチャンスがあるのだから。

獰猛な男
…一族の誇りに勝るものなどない。

ヒューゴ
心からそう思っていると?
貴公があの労働者たちに向ける憐憫を、俺は見逃さなかったがね。
こんな汚れ仕事を押し付けられているのだ…
貴公、レイヴンロックでも傍系だろう?
本家のつまらん遊びに付き合うのも飽き飽きしてきた頃合いではないかね。

獰猛な男
俺に選択肢はなかった。
レイヴンロック家に生まれたその時から、俺は…

ヒューゴ
選択肢はいつだってある。
貴公さえその気になればな。
さて、おしゃべりはここまでだ。

ヒューゴはレイヴンロック家の人間たちに、首筋めがけ素早い手刀を叩き込んだ…

ヒューゴ
安心しろライカン。
殺してはいない。
少しおとなしくしてもらうだけだ。

おびえた労働者
どう?
あたしの演技、なかなか悪くなかったでしょう?

ヒューゴ
ああ、いつも通りにな。
貴女を見習うべき人々はごまんといる。
この後のことも頼んだぞ。

おびえた労働者
がってん!

労働者たちはレイヴンロック家の者たちを運び出し、現場にはライカンとヒューゴの二人だけが残った。

ライカン
さあ、もういいだろう。
これは一体どういうことだ?

ヒューゴ
貴様が見た通りだ。
先ほどの労働者のひとりは、俺が潜り込ませた人間でね。
彼らに使われた薬も事前にすり替えてある。
あれはただのビタミン剤だ。
むろん、先ほどの者たちが免れただけであって、ハルトマンの薬を服用してしまった労働者もいるがね。
だが、この精神を支配する薬については解毒剤を作らせている。
その筋の専門家を集め、俺のデータも提供済みだ。
そう遠くないうちに成果が出るだろう。

ライカン
お前のデータ、か…
自分を狭苦しいガレージに縛り付けて、発作をしのごうとしていたな。
あれは証拠を確保する以外にも、薬のデータを集めて解毒剤を作るためでもあったのか?

ヒューゴ
これはこれは。
貴様もどうやら、まだ手遅れになるほど愚かではないようだな。

ライカン
…ただ意地を張っているだけだと思っていた。

ヒューゴ
前言撤回だ。
貴様は俺のことをまったく誤解している。

ライカン
フン…
だが、最後にもう一つだけ教えろ――
なぜ、オレにこのことを黙っていた?

ヒューゴ
……
あのとき…
じっちゃんと貴様が話していたことをすべて聞いていたからだ――

「ジャックの忠告」
ヒューゴとライカンは、ジャックが生前に残した言葉を思い返した、二人の間には、いまだ解消されていない誤解があった…

ヒューゴ
じっちゃんの生前、あの小さな屋根裏部屋で…
貴様だけを残して色々と忠告を与えていたな。

ライカン
じっちゃんは、お前に道を誤らせるなと…
あのことを知っていたのか?

ヒューゴ
いかにも。

ライカン
…そんなこと、一度も言わなかったじゃないか。

ヒューゴ
ハッ…
どんな顔して切り出せばよかった?
ひどいじゃないかと非難しながらか?
あるいは信じてくれと懇願すべきだったか?
貴様も知ってのとおり、どちらも俺には無理な相談だ。
ましてや…
あの頃は、自分自身のことさえよくわからなくなっていたときでね。

ライカン
じっちゃんは、ただ――

ヒューゴ
すべては過去だ。
俺に面と向かって弁解する必要はない。
そんなことより…
まずはここを出ることが先決だろう。
昔話には、もっとふさわしい場所がある。

「宿敵にして、親友」
ヒューゴはライカンに、ハルトマンが兄を殺して権力を奪った真実を明かし、自身が一度闇に落ちたことを告白しつつ、悪しき竜にはならないと決意を示した。
誤解を解いた二人は和解した。

ホロウを抜けた後、二人は景色のいい場所へとたどり着いた…

ヒューゴ
ライカン、あの時あったことは…
俺の仕業ではない。
あれはハルトマンが、父親から一族を奪うために仕組んだもの。
父親を殺したのも彼だ。
俺が真相を知ったのは、ずいぶん後になってからだった。
あのとき、俺は確かに父親を手にかけた。
殺せたと思っていたのに…
二度も失敗した。
最初にしくじったとき、俺が躊躇さえしなければその後の何もかもが起こらずに済んだとはいえ…
俺は今も、連中が死んで当然だったと思っている。
だが、もうどうでもいいのだ。
今はそんなことより遥かに重要なものがある。

ライカン
ヒューゴ、お前は…

ヒューゴ
この一点に関して、俺たちの意見が一致することは永遠にないかもしれないな、ライカン。
だが俺だって、俺の中の「醜い」ところに抗おうという意思があった。
しかしこいつはどうも、拒絶すればするほどこの身を苛んでくるようでな。
だから俺は、この狂気と怒り、そして憎悪に塗れた自分を何もかも認めることにした。
俺は絶対に、父親やハルトマンのような人間にはならない。
その一心さえこの胸に刻んでおけば…
それだけで十分だとわかった。

ライカン
…変わったな、ヒューゴ。
だが、少なくともましな方へ変わっている。

ヒューゴ
妙に上から目線なのが、貴様の気に入らないところだ。
それに変わった、だと?
誰かさんほどではないと思うがね。
俺は今でも、じっちゃんが言ったことには頷けない。
貴様の選択を許したわけでもない。
この先も、俺が正しいと思う道を歩むつもりだ。
たとえ茨の道を、泥にまみれて這い進むことになろうともな。
だから、貴様が正しいと思う道を歩むことについては…
許してやろう、ライカン。

ライカン
なんだ、オレは礼を言うべきか?

ヒューゴ
どういたしましてだ。
ところで、貴様の足と目について…
まだきちんと話したことはなかったな。

ライカン
あれは事故だった。
お前のせいだとも思っていない。
もうなんともないんだ…
お前もそうだろう。
それに…
オレも誤解について詫びるべきかもしれん。
お前が権力を求めていると信じて疑わなかった。
すべては野心を満たすためで、てっきり…
何もかもを裁く、神にでもなりたがっているのかと。

ヒューゴ
ああ、俺は神だとも。
自分自身の神だ。
だが言うなれば、この世界では誰もが自分自身の神なのだ。
変えられないことはたくさんあるが、俺たちがこの手で決められることも同じくらいある。
言ったろう。
俺を殺せるのも、俺を救えるのも…
いつだって俺だけなんだと。

ライカン
お前がそう考えるようになったのは、喜ばしい限りだ。

ヒューゴ
さて、最後にまだやらねばならんことがある――
レイヴンロックの終焉を見届けに行くぞ。

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